私は救命センターで4年務めた時に転職を考えました。
その動機になったのが救命センターの特色である自傷行為を行う患者(自殺を試みる患者)とその家族との出会いから感じたものがあったからです。
私は救急外来で勤務している時にある患者が自殺を図り搬送されてきました。
一命を取り止めた後にその場で家族との面会がありました。
患者(旦那さん)とその家族は若く、奥さんの側には小学校低学年くらいのお子さんがいらっしゃいました。
しばらくの沈黙の後に奥さんが「何があったの?」と聞き、患者さんは突然泣き出し「こうするしか方法がなかったんだ。」と言いました。
お子さんも「パパ大丈夫?」と何かを察したのか泣き出しました。
その時の光景は忘れられません。
表現が正しいか分かりませんが、誰も報われない、辛い事をどこにもぶつけられない虚しさのようなものを感じました。
その後分かった事ですが、自殺を考えた理由はリストラでした。
しかも、上司のミスを押し付けられた形でのリストラ。
自分が悪くないのに家族も不幸にしてしまうという考えからどうしようもなくなり、自殺に至ったそうです。
実は救命センターで働く上で自殺を図り搬送されてくる患者は多く、その中でも同じ人が何度も繰り返してくるという事は良くある事です。
考えれば当然の事ですが、救命センターで治療出来るのは身体だけです。
突然のリストラにより傷ついた心は治療出来ません。
その時の出来事があり、その後も同じように自殺を図って搬送されてくる患者さんを見る度にこの人は何があってこんな事をしてしまったんだろうと考えるようになりました。
そして命を救ってもこの人は救えていないと思うようになってきました。
そのような日々の中で精神科への興味を持ち飛び込む事を決意しました。
まさか自分が精神科へ行くとは学生の時から一度も考えていなかったので、驚きです。
しかし、今は出会えて考えを影響を与えてくれた患者さんや家族に感謝しています。
転職という大きな事には悪い所もありますが、それよりもやりたい事を目指せる達成感に充実した毎日を送っています。