寄稿: アユミさんと美幸ちゃんの清拭! – ドジなナースの面白日記より(初出2008年12月10日)
ナースの日勤の仕事の始まりは、「清拭」といって、患者さんの身体を綺麗に拭いてあげることだ。
テレビなどで、暖かいお湯とタオルで、患者さんの体を丁寧に拭いているナースの姿をご覧になったこともあると思う。
重症の方で動けない方などだと、暖かいタオルで体を拭くと、「気持ちいいです」と喜んでくださる。
そのような患者さんだと、非常にこちらもやりがいがある(^^)。
私の病院では、自分で病院のお風呂に入れる人以外は、毎日、重症軽症にかかわらず、全員の患者様に丁寧に清拭を行うこととなっている。
だが、ナースのアンケートでは、清拭が医療行為とは思えず、業務の中で一番嫌いと思っているナースが多いのが現実だ。
これは「患者に献身的なのがナース」というイメージを裏切るので、一般の方にはショックな話かもしれない。
実際、同じ県の大きな病院では、朝の清拭業務は、看護師の強い希望で看護助手の方たちに任せている。
そのため、ナースは朝から医療業務に集中することができ、大変仕事の能率が上がったそうだ。
また、清拭は毎日ではなく、2日に1度、または重症者のみにしている病院も多い。
だが、仕事熱心なアユミさんは、
「清拭にこそナースが一番時間をかけるべきよ!患者様を毎日綺麗にしてあげなきゃ!
1日おきなんてとんでもないことだわ!全員で、すべての患者さんに毎日行うのが常識よヾ(。`Д´。)ノ。!」
と言って、軽症、重症のどの患者さんにも大変時間をかけて清拭をして回る。
主任のアユミさんがいる日勤の日の朝は、みんな不機嫌だ。
なぜなら、アユミさんは清拭に徹底的に時間をかけるよう全員に監督するので、後の業務が大幅に遅れてしまうからだ(-“”-;) 。
「検査や手術がたくさん入ってるときは、もっと短い時間で、清拭を手早く行いませんか。それか、清拭組と点滴組に分かれてもいいと思います。
ぎりぎりになって慌てても困りますし・・・。病棟の看護師の人数も不足してる実際、毎日点滴開始の遅れなど、支障がでてます。」
勇気あるリカさんが、アユミさんに言った。
でもアユミさんは、
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「業務が詰まってる日なら、いつもより30分でも1時間でも早く来て用意すればいい話でしょう!私はいつもそうしてるわ!
それより、あなたは何のために看護の仕事をしてるのかしら?と聞きたいわ。
みんなも同じ考えなの?
そもそも私たちの業務を優先して、患者さんへの清拭に手を抜くなんて許せないヾ(。`Д´。)ノ。!
それなら、私一人でも、全員の患者さんに時間をかけてやるわ!」
と言って、涙ぐみながら、冬でも毎日汗びっしょりになって患者さんを献身的に清拭している。
患者さんには感謝されるだろうし、本当に理想的なナースだと思う。
だが、手術の込んでいる日や、時間に追われる多忙時は、その姿が正直言って重いときもある。
そのアユミさんの休みの日曜日。私と美幸ちゃんが日直だ。
私の病院では独身組が日直をさせられることが多い(;^_^A
私は美幸ちゃんとペアで清拭に回っていた。
美幸ちゃん
「今日も朝から、うちら二人だけで40人もの清拭かよ。多すぎだっつうの~。日曜日は自分でできる人は、自分でしてもらってもいいと思うけど!
この病院は、変なところでサービスしすぎだよ。
給食も私たちが全員配って、患者さんに自分で取りにこさせない決まりだし。ここはレストランで、うちらはウエイトレスかよ! (美幸ちゃんはウエイトレスに見えないなあ。)
ちょっと、あんた!(私のこと)もったもたすんじゃないよ!さっさと清拭終わらせてよね!
この後、30人分の点滴を午前中に始めないといけないんだからね!まったく、一人3分でいかなきゃ間にあわねえよ!」
美幸ちゃんはぶうぶう言って、ドスドスと足音を立てて病室へ。怖い。
タオルをお湯の入ったバケツに バッシャアッと放り込み、大きな手で絞る。1回で。すごい握力だ。
そして、まだ口を開けて寝ているタロウさん75歳の顔に、無言でバシャッ!と当てる。
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「ギャ!ぅあちいーっ!((゜д゜;))」
タロウさんがびっくりして、目を覚ました。
そりゃそうだ。
美幸ちゃん「何が熱いんだよヽ(`Д´)ノ!」
タロウさん「あ、熱すぎだよ、やけどするじゃないか(゜д゜;)!」
タロウさんの顔は赤くなってる。
美幸ちゃん「そのうち冷めるよ!男だろ!我慢しな!(゙ `-´)/」
わしづかみにしたタオルでタロウさんの顔をゴシゴシッ!
まるでタワシでお芋を洗ってるようだ・・・。
タロウさんの目は、思い切りタオルで上下にこすられ、開いたり閉じたり・・・。
タロウさん「あちちっ!あちいーって!おい!ちょっとー!」
・・・・・すみません、タロウさん、運が悪かったね(((゜ー゜;)))。
そして次は軽症のムチウチのサワオさん。
ナースにかまってもらうのが好きな独身の男性、45歳。
いつも清拭が楽しみと言っている。
ちょっと気持ち悪い(-。-;)。
私「次はサワオさんですね・・・。」
美幸ちゃん「ああ~?サワオ~?サワオは自分で体くらい拭けるだろう!甘えんじゃねえよ!ムチウチくらいで普通だし、お湯だけ渡して来なっ!」
私「い、いえ、この人もナースが毎日清拭するようになってるんです。」
美幸ちゃん「はあ?何で自分でさせないんだよ!全員清拭してたら、時間がいくらあっても足りねえよ!あんた、さっさとして来てよ!手短に!」
ええ~・・・。 正直言ってサワオさんは苦手だ。
清拭するとき、ナースの顔を見て、妙にニヤニヤしてるし・・・。
私が躊躇してると、美幸ちゃんが「だから~!後、仕事が詰まってんだよ!」と私を押しのけて、サワオさんの部屋のドアを ガラーッ!!と、思いっ切り開けた。
ノックなんてしない。
思い切り開けすぎて、 ガーンっ!と、跳ね返ってきたドアを手でガシッ!と押さえながら、美幸ちゃんは仁王立ちしている。
「サワオさん!今日も体を拭きますかーっ( )`ε´( )!?」
びっくりするような大声で叫ぶ美幸ちゃん。
突然現れた、まるで朝青龍のように大きな強面のナース。
サワオさんはびっくりしている。そりゃそうだろう。
いつもの笑顔の優しそうなナース達ではないからだ。
さあ、どうする?サワオさん!
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美幸ちゃん「どうしますかーっヽ(`Д´)ノ !?」
再び大声。
「断れよ!遠慮しろ!」のオーラが出ている・・・。
普通の患者さんなら「今日は、け、結構です・・。」と言うだろうな。
でも、ナースにかまってもらうのが好きなサワオさんは
「はい!今日も拭いてください~(^^)」と言った!
美幸ちゃんは、ムッ!とする。(怒った朝青龍そっくり)
「このエロおやじめ!何が拭いてください~、だよ!普通、いいですって言うよな!」
と私に小声で言いながら、お湯の入ったバケツを、サワオさんのベッドの横にドーンっ!と置いた。
お湯が飛び散ってるぞ・・・。
「ほら、服脱いで!ちょっとこら!パンツは脱がなくていいんだよ!
横っ!横向いて!なんで私のほうに向くんだよ、あっちだーっヽ(`Д´)ノ!」
大きな声が響いている。
サワオさん
「いてえ!看護師さん、ちょっと、もっと優しく・・・!」
「も、もういいです!あとは自分でします!((゜д゜;))。」
美幸ちゃん
「あっ、そう!いいんですねっ(`Д´)!それじゃ!」
美幸ちゃんは「もっと早く言えっ!」と小声で言いながら、ドスドスと病室を出て行く。
大股で歩くので、バシャバシャっとバケツからお湯が飛び散る・・。
サワオさんには悪いけど、外で笑いをこらえるのが大変だった。
サワオさん、ナースもいろいろいるのだよ・・・( ̄ー ̄)